2005年12月31日
【写真】インド・ヒマラヤ鉄道・第9話「終着」
混雑する車内では、昼下がりのけだるい午後の日を浴びて気持ちよさそうにうたた寝をする乗客がいました(写真上)。窓の下にミカン売りがやって来ました(写真2番目)。吾輩は喉が渇いていたので一袋買いました。10ルピー(約25円)でした。甘くて果汁が多くてじつにおいしいミカンでした。吾輩が日本で愛好している有田ミカンよりもおいしいかもしれない、と思いました。そもそもインドは果物がおいしいのです。マンゴ、パパイヤ、パイナップルも甘くてみずみずしくて香り高くておいしい。ついでに言えば鶏肉もおいしいし、鶏卵もおいしい。インドではなんでもおいしい。カレーの香辛料なんて最高だし、いつでもどこでもチャイを飲みたくなる雰囲気でもある。濃ゆいインドカレー人のおつきあいがなくて猛暑とモンスーンの洪水がなければインドに住んでもいいぞ!とさえ思い始めてきました。
列車は川を渡り、パンジャブ州の北のはずれ、パタンコットの街に入ったようです。しばらく走ると、終点のパタンコット駅に到着しました。約10時間の長旅を終えた我らが豆汽車は、沈みかけの太陽に照らされていました(写真下)。デリーと結ばれる本線の大きな駅は隣に見えているのですが、ジョジンデルナガールからやって来た狭狭軌鉄道の豆汽車用の駅は、ホームさえあるのかないのかよくわからない所でした。昨夜から添い寝までした仲の豆汽車ともいよいよここでお別れです。きのうから24時間ぐらいこの豆汽車と触れあってきたことになります。本線の駅側にホームがないので、吾輩は客車から地面に飛び降りました。客車を最後にもういちどナデナデしてから、客車に背を向けて歩き始めました。線路を幾つも超えて本線の駅舎へ向かいました。線路の間にはいろいろなものが落ちていて、いろいろな小動物が走り回っていました。紙くず、ビニールくず、雲古、ネズミ、ゴキブリ・・・
<お知らせ>年末年始にかけてしばらく更新をお休みします。みなさま良いお年を!また来年もよろしくね!
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2005年12月30日
【写真】インド・ヒマラヤ鉄道・第9話「ほんもののインド」
列車は菜の花が咲く小麦畑を見ながら走っていました。制服なのでしょうか、きちんとしたおそろいの服装の生徒たちが談笑しながらあぜ道を歩いていました(写真上)。列車の速度が遅いのでそんな風景がゆっくり眺められ、彼らの声まで聞こえるほどでした。ど~ですか、のんびり走る豆汽車の旅はほんとにいいものですよ!
ある小駅に停車中、駅舎の屋根の上にサルの親子を発見しました。母猿が小猿に何やら食べ物を与えているほほえましい光景でした(写真中)。こんな風景も、開けっ放しの窓から手に取るように眺められるのです。ど~ですか、豆汽車の旅はほんとにいいものですね!
ちょうどこの先、およそ10km向こうに、中国から亡命したダライラマ猊下が居住するダラムサラがあります。今回はスケジュール上あいにくそこに立ち寄ることは出来なかったのですが、10km程度の距離なら、ダライラマと同じ空気を吸っていると言えるかもしれないなと思いました。開け広げた客車の窓から入ってくるおいしい空気は、きっとダライラマ猊下も吸っていることしょう。勝手にそう思うことにしました。そして、ダラムサラもこの景色と同じように、きっと静かで平和な場所なのでしょう。いつかぜひ訪問したい場所です。ど~ですか、のんびり走る豆汽車の旅ではゆっくりといろいろなことに思いをはせることができるのでほんとにいいものです!
しかし、のんびりするのはそろそろお別れのようです。ある小駅から乗客がドヤドヤ!と乗り込んできました(写真下)。みんな、プロレスのタイガージェット・シンに見えました。吾輩の客車にも攻め込んできて、彼らは座席にちょっとした隙間を見つけると、そこに自分のお尻を突っ込んできて座ろうとしました。こうして、今まで左右の窓を行き来して両方の景色を楽しんでいた余裕はもはやなくなり、吾輩は狭い座席で完全に身動きがとれなくなりました。ちょっとでも気を許すと、インドカレー人はお尻に圧力をかけて、どんどん自分の領域を増やして楽に座ろうとしてくるので、それに抵抗して踏ん張っていなければなりませんでした。いやはや疲れる_| ̄|○
まるでインドみたいです・・・って、もともとここはインドなのですが、久しぶりに濃ゆいインドカレー人をたくさん見て、久しぶりにインドに戻った気がしました。ヒマラヤ地域に入ってからは、バスの猛烈運ちゃんや野外のトイレの他は、インドらしいものはむしろ少なかったのです。やれやれ、これまではインドの田舎でのんびりできて良かったけど、これからまたほんもののインドで気合いを入れてがんばらなあかんのでした・・・。
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2005年12月29日
【写真】インド・ヒマラヤ鉄道・第8話「プラン氏よさようなら」
いろいろ楽しませてもらったプラン氏はパタンコットへの途中駅Baijnath Paprola(写真上)で勤務交代のようで、ここでお別れです。プラン氏は列車を停車させて機関車を飛び降りるや、吾輩が乗っている客車に走ってきて、列車の停車時間が約30分あることを告げ、チャイ屋(写真中)でチャイを買ってご馳走してくれました。プラン氏は昨日からの勤務から解放された笑顔でした。これから自宅に帰るらしく、吾輩と固い握手をしてから自分はチャイも飲まずにすぐに去って行きました。その時「写真送ってくれよな!」と念を押されました。
さて、プラン氏との出来事には後日譚があります。吾輩が約3週間後に日本へ帰国するとインドから手紙が届いていました。名前を見るとあの機関車の運転士プラン氏でした。なんだなんだ?と思いつつ封を切ってみると達筆な筆記体の英語で「写真送ってくれよな!」と書いてあるのでした!
プラン氏は便せんと封筒を用意して航空便の切手代を支払って吾輩に念押しするほど写真が欲しかったのでしょう。吾輩もちろん送るつもりだったのですが、プラン氏と別れてから約3週間の旅が続いたので、待てど暮らせど吾輩から写真が送られて来ないプラン氏はやきもきして待っていたのでしょうね。吾輩はプラン氏からの手紙にいっそうせかされたような気分で、このブログに公開したような数々の勇姿の写真をプリントアウトして送ってあげました。特別大サービスで2Lサイズにプリントしてあげたのですが、全部プリントするとずっしりと重くて結構郵便料金がかかりました。この金額があればインドでチャイ数百杯飲めるなあ、などというせこい考えも一瞬頭をよぎったのですが、プラン氏の喜ぶ顔を目に浮かべるとプレゼントする方も気分が良いものです。そもそもプラン氏の日常でこんなふうに勤務中の勇姿なんて写真に撮られることもないだろうしね。しかも解像度の高いデジタルカメラを使ったものだからプラン氏の皺の一本一本までくっきりハッキリと写っています。そんじょそこらのインドの観光地によくいるカメラマンの写真よりも格段に写りが良いので、きっと宝物にでもしてくれて、ことある毎に子どもや奥さんやその他親族一同や同僚に自慢げに見せるのだろうな、と思いました。
さあ、チャイを飲み終えた吾輩、出発まで駅構内をウロチョロしました(写真下)。プラン氏は去って行ったのだけど、ここの駅長は吾輩のために出発まで駅長室に椅子を用意してくれました。まるでVIP待遇ですが、これもプラン氏効果のようでした。プラン氏、じつはこの鉄道の要人ではないのか?とさえ思えてきたのでした。
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2005年12月28日
【写真】インド・ヒマラヤ鉄道・第7話「快走」
列車はヒマラヤの山並みを見ながら快走していました(写真上)。
ど~ですか。どこまで走ってもやっぱりヒマラヤ連峰が眺められるのです。あたかも我々は常にヒマラヤに見守られているというか見張られているというか、そんな気さえしてきます。ちょうど月夜にどこまで走っても月がついてくる、と言った感覚に似てるかもしれません。ヒマラヤの場合、お釈迦様の大きな手のひらの先っぽがヒマラヤで、我々は皆、お釈迦様の手のひらの上で生活しているのです。我々はお釈迦様の手のひらの上で生を受け、森羅万象を経験させられている・・・。
日本にいたら思いもよらないような、そんな宗教じみた考えさえ浮かんできます。これもヒマラヤ効果かもしれません。
線路は下り勾配が続いていました。機関車の運転台で見たプラン氏のブレーキさばきが目に浮かびました。プラン氏は眉間に皺を寄せながら今もブレーキとノッチを巧みに操っていることでしょう。
小駅に停車したとき窓から首を出すと、プラン氏は機関車から吾輩に合図を送ってきました。「どーだ!なかなかいい景色のところを走ってるだろ!」と言わんばかりの満足げな表情でした(写真中)。反対側には無人の客車が停まっていて、小鳥がのどかに出たり入ったりしていました(写真下)。ディーゼル機関車がピポ~!といななくと驚いた小鳥は逃げてゆき、列車はまたゆっくりと走りはじめました。
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2005年12月27日
【写真】インド・ヒマラヤ鉄道・第6話「停車」
さあ、もう充分機関車の運転台を楽しませてもらいました。本音はこのまま9時間先のパタンコットまで運転台に居させて欲しかったのですが、やはり狭い運転台に機関助手も含めて3人は窮屈でした。プラン氏はまだ居てもいいのだよ、と言ってくれたのですが、次の停車駅で客車に戻ることにしました(写真上)。乗客もいつしか増えてきていて、しかも、外国人がちゃっかり機関車に乗り込んだことがすでに何人かに知れ渡っているようで、窓から首を出して吾輩の行動を興味深げに目で追っているのでした。それはやっぱり濃い視線でした(笑)。吾輩が客車に乗り込むとプラン氏は機関車から身を乗り出して「おう!乗ったか?」と吾輩に確認してくれました(写真中)。吾輩がOKとサインを出すとプラン氏は手を挙げて、機関車はピポ~!と汽笛がなりました。なんだかこの列車の車掌にもなったような気分で、プラン氏のおかげで運ちゃん、機関助手、そして車掌と、1粒で3度もおいしい体験をさせてくれました(涙チョチョ切れ)。
客車内はまだすいているので、吾輩は景色にあわせて右に左に席を移りながら景色を楽しみました。左側の窓から後方の眺めると、後方の客車の乗客は、今も吾輩の行動の一部始終を濃い視線で見ているのでした(写真下)。何者なんだあの外人・・・とでも思っていたのでしょうか?
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